【聞いてみた】あなたの会社における「デザイン経営」とは?_Vol.1 ONOSE MOTORS

5年で売上7倍以上アップの秘密は、「Blue」にあった!?

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▲ONOSE MOTORS、小野瀬社長、筆者(左から)

ONOSE MOTORS社長と初めて出会ったとき、「私たちはBlue業者(青がトレードマークの整備工場)として通っていますよ」とおっしゃっていたのが印象的だった。お話を伺うと、いつもBlueのジャンパーを着ているので、常連さんにはそれで通っているということ。
そこで、デザイナーとしての好奇心がわいた。Blueを通したブランディングをされているのではないだろうかと、気になってきた。
 もっと詳しく伺うために、茨城県ひたちなか市に所在している「ONOSE MOTORS」を訪問した。初めに目にした社屋の色も、Blueだった!その「Blueブランディング」ストーリーに迫る。


1.ONOSE MOTORSが、コーポレートカラーをBlueにした理由

 今から6年前(当時2016年)、お父様から事業を引き継いだ現社長の小野瀬さんが、はじめに行ったのは、コーポレートーカラーを決めることだった。「中小企業には色がない」と明言する彼を目の辺りにして、会社においてのブランディング意識が高いと感じた。
 小野瀬さんは前職で、「証券会社」や「大手の人材会社」を経験しており、おそらく、その影響も大きいだろう。
 そんな彼がBlueをコーポレートーカラーにした理由は、大きく2つ。「競合には赤色が多いこと」と「安心したイメージを出したい」ということだった。どこにもありそうなまちの自動車整備屋だが、会社としてきちんとした整備やサービスの品質アップを通して、顧客提供価値を高めることを大事にしたいという小野瀬社長。
 その実現のために、真っ先に決めたのが、「コーポレートーカラー」と「会社ロゴ」。それを基盤とした会社案内、看板、ネックストラップ、ジャンパーまで、徹底して「Blueブランディング」を貫いている。

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▲社内の備品

2.社員とのコミュニケーションにつながっている!?

 とても驚いたのは、社内のあちこちにBlueが浸透していることだった。たまたま目についたUSBの線の色や資料整理用のファイル、会社理念の額など、全てBlueトーンに統一されている。小野瀬さんからは、社員からよくこう言われていると聞いた。
 「このBlueは、うちっぽくないっすね」と。
 確かにBlue(青)と一口に言っても色々とある。空のような若干パステルトーンの優しい色は、スカイブルーと呼ぶし、深い海の中のようなBlueは、マリンブルーと呼ぶ。
 ONOSE MOTORSのBlueは、どこにもあるBlueではなく、ONOSE MOTORSにしかないBlueだと感じた。そこには、見えない社員との絆があり、彼らの帰属意識がBlueを通し表面化されているのではないかと、思えた。
 今風ではあるが、Blueのマスクを愛用する社員もいるそうだ。無意識のうちに愛社精神が育まれる環境の中心に、Blueがあるように感じた。

3.経営哲学にもカラーを出しているONOSE MOTORS

 当然ながら、自分が好きなカラーがあれば、嫌いなカラーも存在する。前述したBlueに社員全ての共感度合いが必ずしも高いとは限らないものと考える。その点にも小野瀬さんは理解が深く、経営や人のマネジメントにも、そのカラー(価値観)をはっきり出すことによって、より強い会社を作っていくという良い循環につなげようとしている。
 彼は「2:6:2」というパレートの法則をアレンジした独自の人材マネジメントの見解を持ち、行動している。2割が社内を動かす言動力という点は同様だが、8割のうち、ONOSE MOTORSカラーに共感度合いが低い2割には彼ら自身の価値観で行動するのを認めているのだ。真ん中の6割の人材に、いかにONOSE MOTORSカラーに共感してもらえるのか、行動してもらえるのか、にシフトすることで、全体8割の人材の力を強くしていくことを考えている。
 筆者には、その考えを可視化してるのが、社内のBlue化ではないかと感じた。最初は小野瀬社長からの指示により「Blueブランディング」が始まったが、次第に、社員自ら作りだしている状態となってきた。まさに、社長と社員のカラー(価値観)がつながっているのだ。

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▲ONOSE MOTORSの経営理念と社員の皆さん(左から)

4.Blueから感じる「デザイン経営」への可能性

 小野瀬さんの何気ない「うちはBlue業者と言われている」というお話からスタートしたインタビューだったが、経営とデザインの補完関係について、深められたような気がする。
 デザイナーの立場にいると、ついつい当然のように、会社のイメージアップにはブランディングが必要で、そのためにはコーポレートカラー、ロゴ、社内ツール全般を統一させることが重要だと伝えてしまうことが多い。そこに「So whatがない」ことに気がついた。
 なぜ必要で、なにがメリットかデメリットか、どうやってできるものか、どこから始められればいいのかなど、その会社の経営全般を見据えて、考えていく必要があるのだ。
 一円は、会社理念を込めた「ロゴ制作やブランディング」を生業にしているが、多くの中小企業からの依頼は、表現的(見た目)な部分に留まるケースが多いように感じる。
 前述したONOSE MOTORSの「Blueブランディングストーリー」から分かったように、カラー一つでも、影響を及ぼす範囲は社員から顧客まで。経営全般において大きい影響力を持たせることができるのだ。デザインが経営に及ぼす影響力は高いと考え、一円では、それを「デザイン経営(※1)」と呼ぶ。(※1)2018年、経産省がガイドラインを出した。
 小野瀬さんの、中小企業には色がないという言葉を噛みしめながら、デザインを通した経営力アップに貢献できるデザイン会社の役目を深めていきたい。

【以下、ONOSE MOTORSの情報】
小野瀬自動車
https://onose.co.jp/